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京都大学心理学研究会

京都大学心理学研究会シナプスの活動記録です。

社会的影響(2)

Ⅲ.社会的影響の種類

社会的影響には、主に次の2種が想定されている。

 

1.規範的影響

規範的影響は、成文法や暗黙の了解などの規範を土台に持つ社会的影響である。この影響は原理上賞罰の存在が背景にあり、維持されるためにはコストがかかる。では、なぜ規範的影響は維持されるのだろうか。

規範的影響が維持されるのに重要な要素の1つは、社会規範に対する受け手の敏感さである。集団の人間がルールに忠実であるほど、規範的影響は維持されるということである。この敏感さは他者の存在の有無によっても上下し得る。(コーヒールーム実験

もう1つの要素は、規範の社会的帰結である。社会規範を逸脱した先にあるペナルティへの恐怖により、規範が維持されるということである。規範の社会的帰結を恐れて集団全体が事実と異なる認識を持つことを集合的無知という。

 

2.情報的影響

情報的影響は、他者の行動の情報の価値による影響である。一般に個人は、事態に対する自分の認識の正しさが自分で確かめられない時、他者の認識との比較によりそれを確かめようとする。認識が自他で一致するとそれに確信を持つようになる。これを合意による妥当化という。合意による妥当化が実際に起こる現象であることは、シェリフの実験により確かめられた。

 

<シェリフの実験>

シェリフの実験は、視知覚の自動運動現象を利用している。自動運動現象とは、暗室で光点を見続けると、実際には動いていないがそれが動いて見える現象のことだ。被検者は、まず一人で暗室に入り自分にとっての光点の移動距離を報告する。その後、報告した移動距離の異なる3人を一緒に暗室に入れ光点の移動距離を繰り返し報告させると、最初は3人でバラバラだった移動距離が、回を重ねるごとに同じ値に近づき、最終的にその組独自の一定値に収束する。この結果は、社会的比較に用いられる共通の準拠枠が形成されたということを示唆しており、社会的比較が実際の現象であることが分かる。

 

Ⅳ.社会的影響のマクロ的帰結

今迄見てきたように個人と集団は互いに影響を及ぼし合っている。集団が持つ社会的影響を個人は受容し、その受容という行為によって個人は集団内の他者に影響を及ぼすことで、集団全体に影響している。この構造を循環的プロセスという。

 

しかし、実際の社会活動はそのまま維持されるのではなく、拡大・縮小する。
この仕組みを単純な事例で説明したのが、グラノヴェダーの閾値モデルだ。


閾値モデル>

閾値モデルは、個人の社会現象への感受性に個人差があると考え、「周囲のn割がある行動をしたら、自分もその行動をする」という閾値を個々人が持つことを想定している。例えば、100頭のシマウマの群れが上の前提を満たすとすると、天敵が現れ最初にn割の馬が走り始めることで、より多くの馬が走り始め得る。これをドミノ的プロセスというが、これが起こるかどうかは最初に走り始める馬の頭数が一定値(限界質量)を超えているかどうかに依存する。

 

すなわち閾値モデルのポイントは、①他者の行為に喚起された自分の行為が、また他者の行為に影響を及ぼし得る(循環的ダイナミズム)こと、②ある社会現象が拡大するか縮小するかは、初期値に依存する の2点である。

 

【参考文献】

複雑さに挑む社会心理学 適応エ-ジェントとしての人間